速く走りたい時に、心情として、少しでも長く加速状態でありたいのは気持ちの上では、ごく普通のことだとは思う。
ギリギリまでブレーキを我慢して、一気にブレーキペダルを踏み込む。当然後輪は持ち上がる。ステアリングを回せば、車は回り始める。極端に言うとフロントを支点に。どれだけちょうどよくリヤを振り回して、どれだけちょうどよく後輪を路面に落として、アクセルをどかーんと踏み込むか…?
とりあえず侵入で大きなアンダーステアは出なかった(車が行きたい方向には行っている)状態。それはあくまでも私の妄想の中での話で実際どうなるのかはわからない。
自分の前の相棒は非力で幅広タイヤだったから、サーキットでもなかなか回らないよと苦笑いで言われるくらい。そんな車でタイヤに対してオーバースピード&ノープランでコーナーに突っ込むと、回るよりも先にどアンダーになる。それが三年前の自分の走り。
三年前当時、その走り方に限界を感じた。誰かに教わったわけでなく、速く走りたいとおもったらそうなっていって、これが本当に速く走ることなのだったら、面白くないかもしれないし、半年やってみた車の感じで、このまま続けていくと自分の財力で車の維持がきっとできないと、心の何処かで思った。
これでだめなら諦めようかなという思いを心の片隅に抱えて、最後のチャレンジのつもりで、一番正面から運転の基礎を教えてくれそうだと、公開されている教科書を読んで感じたYRS(ユイレーシングスクール)に行って、聞いたことの一部を自分なりの理解で簡単に書くとこうなる。あくまでも一部だ。
車がコーナリングをする時に、どこが一番頑張っているのかといえば、路面と接しているタイヤで、タイヤのグリップ力には上限がある。だから、四輪フルに使ってバランスを保ってコーナリングをするのが、一番旋回に対して強い走り方。
そんなに難しい理屈ではないように思うのだ。
もちろん、YRSでは、四輪バランスが良い理由、その考え方で速く走るにはどうするかなどの方法はもっとちゃんと説明してもらえて、練習方法が確立されている。
これは本当のことなのかどうかわからないけれど、以前テレビで見ていた海外のレース中の解説で、欧米と日本ではプロのレーサーでもブレーキングに関して傾向が違っていると言っていた解説者の人がいた。日本人でも欧米型のブレーキングをする人がいて…とその解説者は欧米型の方を支持していたような話しぶりだった。
YRS仲間がドイツに行く機会があって、その途中でニュルにレース観戦に行ったそうなのだけれど、レーサーたちはYRSで習う走り方だったと感じたと言っていたし、私自身は習う中で一生懸命に自分なりに考えてきて、(便宜的な分け方なのかもしれないけれど)欧米型と日本型が存在するのだとしたら、その解説者の話に沿って言うなら、おそらくYRSは欧米型なのだろうと思うし、車を運転するにあたって、安全で速いことに近いと私は思う。どこまで実現できるか、まだわからないけれど、そのやり方でなら速くなってみたいと思うようになった。
それは盲目的に欧米>日本という考え方なのではなく。自分なりに時間をかけて何度も何度もそのことを考えてきてそう思う。私にとっては車を走らせる、ということをそれまでよりもっと真剣にトータルで、必死で考えてみた3年だった。
結局「型」というのは自分にとってはどっちでもいい話で、たまたまそういうことを言っている人がいたよというだけのこと。たまたまそれが象徴的なだけで本当は、ブレーキングだけを見直せばいいのではない様な気がする。
YRSで走っていく中で、自分自身は今の所、タイムという数字から言えば、大きい変動はない。習うことの多くを実行できるなら、もっと速くはなると思うし、実際同じくらいから通い続けている仲間は1年以上前から、経験のあるサーキットでタイムアップしていると聞く。
自分は、タイムアップはしていないが、車をポテンシャルダウン(タイヤ&ブレーキパッド)させていって、タイムは一度落ちて、じわじわと受講前と同じ水準に戻っていった。
何よりも安全になって、走ることが苦しくなくなった。消耗品の減りが少なくなり、タイヤの減り方が穏やかになっていった。走行感が軽くなり、ストレスフリーになった。
一言で言うならポテンシャルダウンして楽に走ってタイム変わらず。
そして、スポーツ走行で集団で走るときのルールがちゃんと決まっていて、それを皆で共有していて、それを見守る人がいる、という環境の中で、秩序の大切さも、教えられ、考えもしてきた。YRS以外でもどこで走ったときも、コース上での自分の走行を振り返る。自分の立場と相手の立場の両方。画像が残っているわけではないけれど、一生懸命考えて、反省して自分の中に蓄積する。難しすぎることではない。意識するかしないかの問題。
そして今の相棒のルーテシア3RSを買った。
この車でサーキットを走ったのはまだ実質2回。その2回でわかったことは、コーナリングで必要以上のことをしないことが、どれだけその後のストレート加速に影響するか、という実感の様なものだった。加速が良いはずのルーテシア3RSに乗っても、タイトコーナーで走行抵抗強いなーくらいまでやってしまうと、ストレートの加速が渋い!
車のメリットが感じられない。
例えばスパ西浦でRX-8に最終コーナー手前で大回りで譲って、最終コーナーではすぐさま後ろについて、2コーナーまでは離れなかったときのほうが加速が伸びやかだった。
タイトコーナーで無理して稼いだ?かもしれない分に期待するよりも、抑えてストレートで加速した方がタイムが伸びる、と思った。無理した分より、車の性能を引き出したほうが、タイトコーナーよりストレート加速のほうがメリットがあるのは、理屈ではもっと前から考えていたけれど、実感が伴ったときは驚いてしまった。
自分は四輪でコーナリングする方法やそれが速さと安全に結びつく理由をYRSで知ることができたのだけれど、それを、詳しくここに書こうとしないのは、それを教えることで仕事をしている人がいる、その人のここまでの人生が込められていると思うこと、参加者が参加費を払っている、ということもある。
でも一番の理由は、その走り方が、実行できればほんとにその車の限界を引き出せるものだと信じるから。それを本質的な理解や練習なしに、理解と実践の途上にある私自身の言葉だけで見て、実行したり失敗するかもしれない、ということの責任が、自分には取れない、と思うから。
YRSで公開されているものは、文章で読んでも、根本の理屈とか理由が書かれているので理解すれば読むだけでも価値があると思うけれど、なんとか参加して、自分の目と耳と体で経験する方向に頑張ってみたほうが、きっと得るものが大きいと思う。
私自身が、初受講までは無理かもと思っていたけれど、なんとかしようと思えば、なんとかなった。
YRSで習うコーナリングやサーキットの走り方は、どこを速くすることで平均速度を上げるか、という観点でもあると思っている。それは、時に心情とは違うことが必要になるのだけど、言われてみれば、物理で考えれば、どうして今まで気が付かなかったのだろうと思う事が多い。YRSが特別なことをしていると言うよりは、なぜ、日本でYRS以外でこういうことを教えていないということなのかが、私にはちょっと謎。
ここまで来て、自分がこの先どれだけスポーツ走行を続けられるのか、どういう形で続けていけるのか、ということを自分は常に考えないといけないんだな、と少々後ろ向きともとれる事を思う日々となっている。
後ろ向きではないのだけど、思い切り走りまくれる環境にはおそらく10年経ってもならない様な気がする。体力や気力や金銭力の問題だけではなく、書ききれない伝えきれない何かが、ハードルになっている。
詳しく書こうとするときっと誤解を生むと思う。
女性だからじゃない。女性はたくさん走っている。昨日からのフジの24時間レースでも女性チームのラブドライブが完走した。
オンボード画像をピットに飛ばして、リアルタイムで井原慶子氏のアドバイスを受けながら走っていたそうだ。
スポーツ走行が自分のささやかな趣味になり得るのか、なってほしいと思いつつ、ひとつずつ少しずつ、取り組んでいる。